石炭の黒玉彫り
黒玉は、ジェット(JET)とも言われ、アジア最大の人口鉱坑「撫順西露天炭鉱」の貴重な特産物です。通常の石炭よりも軽い特別な材料で、材質が硬く(硬度2.5〜4度)、構造はきめ細かく全体が真っ黒に輝くので、「石炭の粋(石炭中の上品という意味)と呼ばれています。
石炭の黒玉彫りには、長い歴史があります。1973年に瀋陽市新楽遺跡(新楽遺跡は新石器時代古文化遺跡で、7200年あまりの歴史があります)で出土した石炭の黒玉珠・耳飾りなどの石炭の黒玉工芸品は、撫順の鉱坑から産出された原料から製作されたものと言われています。これらの黒玉珠・耳飾りの発見から、石炭の黒玉彫りの歴史は7000数年前に遡ることが確認できます。
ここ千百年以来は、石炭の黒玉彫りは職人たちによる伝統的な技術で彫られており、補助的な機械を一切使っておりません。彫刻の製作は、すべてが職人の直感と経験によって進められます。原材料を入手し、それによって形がイメージされ、職人の心に下絵ができあがります。素材の質によって彫り出していくという、まるで天然の宝くじの様です。「切り」「こすり」「磨き」「投げ」「たぎり」「伸ばし」「たたき切り」「掘り」「綯い」などなどの特別な技法や製造工程は、機械に取って代わることができない工芸技術なのです。
撫順の石炭の黒玉彫りは、主に人物、動物、素活(秦、漢時代の瓶、鼎などを模造して彫刻する工芸です)の三つのシリーズがあり、種類も200に及びそのデザインも数切れないほどあります。中でも特に代表的な作品には、当時の中国文化を表す特徴を持っています。
石炭の黒玉彫りは、撫順地方の地域文化の代表の一つです。作品には深い文化意義を含んでおり、職人たちの心が込められたものが代々生まれています。構造や組み立て、デザインの名称、図案や飾りなど、すべて中国の伝統文化と民族文化を背景としており、いわば民族伝統文化と地域文化が融合した芸術とも言えます。